ハンガーの歴史
日本では昔から、着物を衣桁(いこう)という鳥居形の道具に掛け、風に当てて汗を乾かしていました。平安時代の書物「類聚雑要抄」によると、大きさは横桁7尺(約210cm)、柱高5尺1寸、台高3寸。棹は漆塗りで、上等なものには蒔絵が施されたり、両端に金銅の装飾金具が付けられていたようです。この衣桁は実用だけでなく、華やかな衣装を掛けて室内を飾るインテリアとしても使われていました。色彩の乏しい当時の寝殿造りの中では、際立った室内装飾だったでしょう。
江戸時代中期には二つ折の衣桁屏風が生まれました。このほか、棹の中央に吊り下げ用の紐をつけた衣文掛(衣文竹)という日本独自のハンガーも使われていました。
明治以降、洋服が普及するにつれて日本には、まずコートハンガーが伝わりました。衣桁と同様、衣服をタンスに収納する前に風に当て、汗を取る道具として使用されました。当初は趣味性の強いデザインが多く、木製の実用的なハンガーが登場するのは大正時代になってからです。昭和30年代後半、ハンガーの材料としてプラスチックが使われるようになりました。大量生産できること、軽くて丈夫なこと、カラフルなこと、価格が安いことなどからプラスチックハンガーはあらゆる分野で使われるようになりました。現在では、木、プラスチックのほか、アルミやスチールなどもハンガーの材料として使われています。また、プラスチックでもペットボトルをリサイクルした材料のものもあります。時代とともに、そしてファッションの変遷とともに、ハンガーも材料や機能、スタイルなどが少しずつ進化しているのです。